産業保健師による退職勧告・首切りの現実

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●ときには冷徹なコストカッター

会社での看護師さんの役割として、健康・メンタル管理や応急処置などのホワイトな、看護師さんらしい役割について書いていきましたが、ここからはブラックな役割について見ていきます。ときに看護師は人事部の「首切り」の補助をすることもあります。産業医や産業保健師さんは人事部の管轄に入ることが多いですが、人事部の役割を改めて整理します。人事部は企業に必要な人を採用したり、採用した人が高いパフォーマンスを発揮出来るように人事制度を整えたりするのが仕事ですが、逆にパフォーマンスの低い社員を排除していく役割も有ります。一見冷酷でひどいことのように見えますが、全然仕事をしていない人に、一生懸命働いている人と同じ金額のお給料を渡していると、不公平感が出てきて全体のパフォーマンスを下げることになります。

 

[ この扉の向こうは光か影か。。 ]

企業ナースと退職勧告

 

 

 

●メンタルの病気からでも復帰しやすい職場を作ってください

ですので、病気やメンタルの問題でケアを求めて来た社員さんが一向に回復する見込みがない場合、ケアをしつつ上手に退職を勧告するということもあります。この場合、企業にとってリスクになるのは「会社から正当な理由なく退職させられた」と法的に訴えられることです。保健師さんを置いているような企業はほとんどが大きい規模の企業で、元社員からの訴訟で会社の名前に傷がつくことを強く恐れています。一度訴訟を受けると「元社員から訴えられている会社」ということでお客さんからの心象も悪く、社員のモチベーションが下がることもありますし、対応のために弁護士に支払う費用もバカになりません。従って、訴訟されないようにそれとなく、かつ納得させながら退職してもらうという非常に難しい業務になります。

ここで、鬱になって産業保健師さんにお世話になったことのある私個人の経験ですが、私のように職場を変えてもらって通常通り業務に復帰出来た例は比較的稀です。もう少し鬱がひどくなっていたら、退職することになったかもしれません。多くの場合メンタルに問題を抱えて産業医にかかった場合、無事に復帰できる確率はそれほど高くありません。現在はメンタルケアについての研究が他の疾病ほど進んでいないため、安易な退職勧告が行われている現場もあるようですが、今後は「メンタルに問題があっても無事に仕事に復帰できるような職場」が増えていけば良いなと考えています。

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